藤沢市片瀬の寂光山龍口寺で6月2日、「歯の塚供養祭」を執り行いました。
これは、歯科医師が抜歯した歯の供養と、歯科技術向上祈願のため、歯の衛生週間であるこの時期に実施しているものです。
当日は、同会会員ら10人ほどが参列しました。
歯の塚には「萬人歯骨塚」と刻まれており、日本で15番目に入歯師(歯科医師)となった水野房吉が「行学結願」したのを記念し、1881(明治14)年に建立奉納されたもので、2000(平成12)年に本会が整備したものです。
【萬人歯骨塚整備の辞】
歯は人の生命を支えるかけがえのない存在である。健康で幸福な人生を送る人々のために、歯科医師は日夜努力を惜しまないが、病気や事故、あるいは宿命の老化により、生きながらにして大切な歯を失うことが多い。 永久歯は失えば再び戻らないのである。日蓮聖人は、存命中に数本の歯を失われた。この歯を自らの生命を支えてくれた分身として、感謝を込めて仏前に供え、 毎月礼拝された。生命こそ、何にもかえ難い財宝であるとする日蓮聖人ならではの歯骨供養である。のちに直弟たちは、これを「御肉牙」と称し、立派な容器に収めて後代に伝え生前の日蓮聖人と接しうるよすがとして供養会を開き、信仰のよろ所とした。いま、この「御肉牙」は大本山池上本門寺に伝存している。爾来、日蓮宗では、壇信徒の歯骨を小壺に容れて各本山寺院に収める信仰的習慣がうまれ、今日に至る。当山でも、古来歯骨塚が存在したと伝えられる。のち、明治十四年九月十三日、横浜の入歯師水野房吉氏が、自らの歯科修業(行学)の結願を記念して、現存の「萬人歯骨塚」を再建、毎年一回藤沢市歯科医師会が施主となり、いまも供養会が営まれている。再建から百有余年を経て、近年に至り、塚石の風化も著しく、周辺の荒廃も目立つようになった。茲に、藤沢市歯科医師会の協力を得て、その保存策を協議した結果、再整備の浄業を実施することに決定をみる。藤沢市歯科医師会の善業の功徳甚多なり。その資助の法功をここに 誌し、永く顕彰するものである。併せて、歯骨供養の信仰を通して、広く衆庶に歯の大切なることを喧伝し、歯科衛生・治療の知識・関心を高揚せんと欲すると 爾か言う。(平成十二年十月八日 霊跡本山龍口寺第十四世 慈悲院日立 和南)